柊研究所の備忘録

アート×ものづくり×教育を考える研究者です。

A.I.ってなに?

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第15回は、今話題のA.I. (Artificial Intelligence: 人工知能)について書きます。

 

Googleが開発した囲碁プログラムアルファ碁(AlphaGo)が世界一のプロ棋士を破ったニュースは、人工知能の飛躍的な発展を世界中に知らしめました。

 

ただ、思い返してみると、学習機能や人工知能という言葉は10年以上前からありました。A.I.、なぜ今になって再び脚光をあびるようになったのでしょうか。複雑な数式は抜きにして概念を説明していきたいと思います。

 

A.I.は人工的な知能である

 

訳しただけです。

知能とはなにか。人は、生まれてから数えきれないトライアンドエラーを繰り返して、言葉を学び、知識を蓄え、人間らしい行いを判断できるようになります。それは、わざわざ数式に置き換えなくても、経験値でわかるものです。

 

その経験値をどうやってコンピュータに教えるのか。これが、人工知能の研究の核、すなわち機械学習です。

 

まずは、最もベーシックな人工知能の仕組みから書いていきます。

 

たとえば、

 

この人は男性か女性か。

 

こんな問題があったとします。多くの人はどちらかわかるでしょう。それは、無意識のうちに、人がいろいろな学習ポイント(特徴量)をみて判断しているのだと思います。

 

学習ポイント1: 髪の長さ

学習ポイント2: シルエット

学習ポイント3: 化粧

・・・などなど

 

コンピュータにこれを教えるとき、最初に、

「男性と女性を見分けるポイントは、髪の長さとホニャララとホニャララと・・・なんだよ。」と教えます。

 

すると、コンピュータはその情報を数字として取り込みます。

 

まずは1人目をトレーニング用として教えます。

 

学習ポイント1: 髪の長さ30cm

学習ポイント2: バスト85・ウエスト61・ヒップ86

学習ポイント3: 化粧はコントラストが高く、

学習ポイント4、、、

 

答え=女性

 

これで、コンピュータは1つの例を記憶しました。これを繰り返して繰り返して、ひたすら繰り返すと、コンピュータは数千、数万、あるいはもっと大量のデータを覚えて、男性と女性を見分けるトレーニングが完了します。

 

十分学習が進むとコンピュータは、

学習 ポイントの数値を聞けばだいたい男か女か判断できるようになります。

 

こんな感じでA.I.が成長していきます。

 

しかしここで壁にぶち当たります。

 

学習ポイントって、どうやって決めるの??

 

男性、女性を見分けるポイントは比較的簡単でしたが、これが、人の文字を見分けるなら?人の感情を見分けるなら?学習ポイントを何にするかがそのA.I.の能力を決めると言っても過言ではないくらい重要になってきます。研究者はこの学習ポイントの発見に力を注いできました。

 

ここで、冒頭の疑問に戻ります。

なぜ、今A.I.が再び脚光を浴びているのか?

 

ディープラーニングの登場

 

A.I.の驚くべき進化の立役者は、機械学習の新手法、ディープラーニングです。ディープラーニングは、階層的な学習手法(ニューラルネットワーク)を用いることで、コンピュータが自分の力で、学習ポイントを決定することができる手法。これにより、A.I.は「学習ポイント8, 137, 50......の順で重要です。」という重要な学習ポイントを自動で決定することが出来るようになりました。

 

自動で学習ポイントが決まる。

こうなってくると、コンピュータとコンピュータが相互に対戦していくだけで、学習ポイントの精度が上がりどんどん強くなっていく。囲碁ソフトがプロ棋士に勝ってしまうのも納得ができます。

 

A.I.が人類を超えると言われている2045年まで、後30年を切りました。ドラえもんやアトムが少しずつ現実に近づいているような気がします。

 

実際にプログラムをつくるには?

 

概念よりも使い方が知りたい!という方は、下の本がオススメです。

 

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

 

ディープラーニングをプログラムで実際に動かす方法を基礎から丁寧に書いています。使用する言語、Pythonの入門から書いてあるので比較的初心者でも読みやすい本です。

 

このブログで取り上げてほしい相談や感想等々を書き込める場として、LINE@に「柊研究所の相談所」をつくりました。気軽に覗いてみてください。

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研究者とはどんな生き物か?

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 第14回は、『研究者』について書きます。

数日前にtwitter経由でこんなブログをみました。

 

研究と開発のはざま - でかいチーズをベーグルする

 

このブログを受けて、

研究者とは?研究者の楽しみは?

研究者という謎の生態について自分なりに書いてみたいと思いました。

 

これは、僕の経験です。

大学の研究室生活と企業の研究所で働く中でみたこと聞いたことから構築されています。

 

研究者はなぜを追求する生き物

 

「なんで?」

すぐこの疑問が浮かびます。

時として、それはものすごく極端で、常識にすらその疑問を投げかけます。

 

「柚子が木から落ちたんだ。」

「なんで?」

「いや、なんでって?」

「水の中なら落ちないじゃないか。なんで空気中だと落ちるんだい。」

「液体だから?」

「液体の中だって、鉄球なら落ちるし、同じ果物でもリンゴなら落ちる。落ちやすいものと落ちにくいものがあるんじゃないかな。。。云々カンヌン

 

とこんな感じでだいぶやっかいな生き物です。

TPOをわきまえてスマートにみせている研究者でも必ず頭の中ではこの「なんで?」を繰り返しています。もし、あなたが研究者の話を聞いて賢いなと思ったらそれは、何百回、何千回にも及ぶ『なんでループ』の繰り返しの賜物なのです。

 

真理を求める研究者と真理を利用する研究者

 

大雑把にわけると、

真理を求める研究者は、大学に多く、

真理を利用する研究者は、企業に多いです。

 

この特性は、目指すべきゴールの違いにあります。

 

大学の研究者は、目指すべきゴールは『なぜ?』を解明すること。(冒頭で紹介したブログでは、ビッグクエッションと呼んでいました。)これに研究者は熱狂します。フェルマーの最終定理のように、一生を費やしても解けない問題や、恐竜の生態のようにより多くの人を納得させる説を唱えることだったり、目の前の『なぜ』が困難であればあるほど、魅力に感じます。だから、その『なぜ』が解決した後に得られる生活や社会の変化は後回しにされることが多いです。

 

一方で、企業の研究者は、目指すべきゴールは、『どうやって使うか。』です。

たとえ、『なぜ』が解明されていなくても、

 

それを使うことで、飛行機を飛ばせたり、

料理が美味しくなったり、

顧客の心を掴めたり、

 

結果として企業活動を良い方向に向けることが重要です。

 

僕は、大学の研究者から企業の研究者になったとき、この考え方の違いによるカルチャーショックを強く受けました。

 

その結果、

大学時代に経験した「この研究はなんの役に立つのだろう」というたまに押し寄せる虚しさがなくなるのと引き換えに、

「このなぜがまだ解決されていないのに」という企業人としての新たな葛藤が生まれました。

 

それでも、僕は企業の研究者になって良かったと思っています。

それは、大学の時には出会えなかった異分野の専門家との出会い、論文にはなっていない膨大な数の実験データ、そして、大学時代には逆立ちしても買えなかった実験装置など、人財とお金の潤沢さから生まれてくる価値は、当時の僕には見えなかった広い世界を見せてくれました。

 

研究者は閃きに魅せられている

どちらの研究者であっても、研究をしていて良かったと思う瞬間は、閃きの心地よさです。

昨日までは、つい数秒前までは、混沌とした頭の中をもがき苦しんでいたはずなのに、ふとした閃きですべてが一変する瞬間があります。

 

ドラマ「ガリレオ」で突然数式を走らせるような、「名探偵コナン」で事件のトラックがわかったときのような、、

 

真理までの道筋がクリアにみえたとき、思考が一気にフル回転して、歩いていても、電車に乗っていても、ご飯を食べていても、そのことが頭から離れなくなる。

 

そんな至福の閃きを求めて、研究者は日々研究活動を続けています。 

 

 

今回の本の紹介は、

 

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

 

研究者の考え方や生き方がある一人のユーモア溢れる研究者の人生を通して伝わってくる本です。

 

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新しいものづくりFablabとは?

第11回は、『新しいものづくり』に関してです。

 

ここ数年、僕は『個人が楽しめる新しいものづくりの場をつくりたい。』と思っています。

 

新しいものづくりとは、

 

あらゆる物をひとつの空間でつくる

 

例えば、車をつくるとき、

 

これまでのものづくりでは、

東京ドーム並みのに大きな工場のあちこちで部品を大量生産して、組み立て、塗装して、その一連の設計・作業には何百人もの人が関わります。

 

新しいものづくりでは、

学校の教室ほどの大きさの空間で、数人がその場でデザインして、3Dプリンタに代表される機械たちを使って、その場でプロトタイプ(試作品)をつくる。

 

大量生産は難しいけど、気軽につくれる分誰もがデザイナーであり、開発者になれる。同じ製品でも個性のある様々な形のものが世の中に出てくる。

 

そんなビジネスプランを考えているとき、Fablabという組織をみつけました。

 

Fablabは、僕の考える『ものづくり』をすでに何年も前に実現していました。それも世界各地に誰でも使えるFablabをつくるところまで。

 

同じFablabでもまったく違う

 

早速、大阪にあるFablabを訪ねてみました。そこでは、ものづくりが大好きな人達が交代で番頭をしている隠れ家のようなところでした。一方、東京にあるFablabを訪ねてみると、学校の教室の一角にあり、ものづくり学校のような雰囲気のところでした。

 

同じFablabでも、全然違います。

 

Fablabの看板は、ものづくりに必要な機材があり、一般の人に開かれた組織であれば、どんな人でも掲げることができるのです。

 

この自由度の高さは魅力的で、自分たちの色のあるFablabがつくれます。

 

僕は、その施設をつくって『新しい感動をつくれる人に出逢いたい』。そんなことを考えています。

 

今、そのための準備を進めています。

 

3Dプリンタなどのものづくりスキルをみにつけ、

プログラミングのスキルもあり、

ビジネスプランを練る力もつけ、

同じ志を持つ人たちにも出逢い、

手本となる組織もみつけた。

 

数年前までなかったものが今はたくさんあります。一気に進める力はなくても、少しずつ確実に進んでいます。

 

続きはまたそのうち。

続きを書きました。

誰もが職人になれる時代 - 柊研究所の備忘録

 

最後に本の紹介です。

Fablabの創設者Neil Gershenfeldさんの本です。

新しいものづくりを世界に広めた方です。

 

 

Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

  • 作者: Neil Gershenfeld,田中浩也,糸川洋
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2012/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • クリック: 6回
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