柊研究所の備忘録

アート×ものづくり×教育を考える研究者です。

ポジショントークと心の溝

僕はポジショントークという言葉があまり好きではありません。ただ、ビジネスを立ち上げたり、マネージメントする立場にとって、ポジショントークは、とても重要な言葉だとは思っています。

 

ポジショントークとは何か

 

最初にポジショントークとは何かを簡単に話したいと思います。ポジショントークとは、

 

株式・為替・金利先物市場において、買い持ちや売り持ちのポジションを保有している著名な市場関係者が、自分のポジションに有利な方向に相場が動くように、市場心理を揺さぶる発言をマスメディア・媒体などを通して行うことを指す和製英語。

Wikipedia より引用

 

もともとは株や為替に関わる言葉だったのが、最近は、その人の立場や肩書きから発せられる言葉のこと。という広い意味で使われているように感じます。どんな時にポジショントークが使われるかと言うと、例えば、新しいアプリがローンチ(発表)された会社のCEOは、例えそのアプリがあまり気に入ってなくても、その新しい性能や機能をメディアに発信して褒めるし、ネガティヴなコメントは避けるでしょう。それは、社内の中で意思疎通が出来ていないことを悟られないために、また、会社が売り上げを増やすために、個人の考えというより、会社の代表というポジションから出てくる言葉です。

 

ただ、こうした見方をしていると、ポジショントークに対して、どうしてもネガティヴなイメージが湧いてしまいます。ポジショントークはセールストークのようなものだと。

 

でも、それは本質ではありません。僕はポジショントークの本質は多面的なものの見方にあると考えています。会社を成長させるためには、研究・開発・人事・マーケティングなど、ダイバーシティに飛んだ人材を採用する必要があります。彼らの考えは自分たちのバックグラウンドに基づくもので、それぞれが全く違う方向を向いて仕事をしています。マネジメントに必要なのは、その多様な考え方を許容できる視点です。

 

空き缶を想像してみてください。上からみたら円にみえて、側面からみたら四角にみえます。まったく同じものをみていても、「これは丸だ!」「いや、四角だ!」と争いが起こってしまいます。マネジメントをする立場の人は、それがある角度で四角みえて、ある角度で丸に見えることを理解しておかなければなりません。共感ではなく理解です。

 

ポジショントークに話を戻すと、多面的なものの見方が出来れば、そのときの状況によって適切な人物を演じることが出来ます。学生の頃、同じ事柄についてランダムに賛成と反対にわけて、議論するというディベートの授業がありました。この授業のおもしろいところは、賛成側の意見も反対側の意見も言えるような多面的な視点が求められるところです。あらゆる視点で意見を言える。ポジショントークが上手い人は視野が広いと言えます。

 

ポジショントークと本心とのギャップ

 

一方で、ポジショントークの問題は、求められる立場を意識しすぎて本心とのズレが生じることです。もちろん、訓練次第で自分の考えと異なるポジションでも熟すことは出来ます。でも、それはストレスになったり、怒りやすくなったり確実に心を蝕んでいきます。毎日声を荒げていた鬼のように厳しい社長が、役職が外れたとたんにニコニコとした人の良いお爺さんに変わるなんて話もあります。長い間ポジショントークをし続けていると、気づかぬ間に自分とポジションとの間に深い溝が出来てくる。ポジショントークって怖い。

 

ポジショントークが出来て多面的な視点が生まれるのは良いことである反面、自分の心とのギャップが大き過ぎると精神衛生上良くない。だから、自分の話す言葉と本心とのギャップには常に気をつけておくのが良いと思います。どうしても縮まらないのであれば、それは、誰かに引き継ぐタイミングなのです。老害という言葉が流行っていますが、後の世代に任せるのはギャップが生まれたとき、それは、早い年齢の人もいれば、スティーブ・ジョブズのように生涯現役の人もいるのだと思います。

 

 

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